《私の本棚 第330》 令和5年11月5日 号
聊斎志異より 「宦娘」
蒲松齢 作?著?
溫如春 は琴がが大変好きで旅をするときも離さず持ち歩いていました。あるとき古寺の前を通りかかって、暫く休もうと思って入ると琴を持った爺さんが居ます。話しの成り行きで琴を弾いて聞かせましたが、
「上手いけれど私の師匠としては不足」 と言います。そこで奥義を指南してもらって旅を続けました。家まであと数十里 (15㎞位?) という所で、日暮れの雨に降られます。近くに在った趙という家に入り込むと、凄い美人の娘と顔を合わせましたが隠れてしまって出てきません。お婆さんに尋ねると名を宦娘と知りました。一目惚れだったので嫁に貰いたいと言いますが、何かしらの訳ありで断られます。仕方無く夜道を自宅に向かいました。 時を経て、ある家で琴を所望され奏でている時に、簾越しに良工 という絶世の美女を目にしました。溫も心移りの多い美人好みとみえて、仲人をたてて申し込みましたが家柄が違うと断られます。しかしある日、良工は庭で艶っぽい詩が書かれた一枚の紙を拾いました。机の上に置いていた紙を見た父親は思い違いから娘を溫に嫁がせます。 溫は縁談が決まり宴が終わって寝ようとしている時に、自分の真似ををして弾こうとしている琴の音を聞きます。幾日かして良工を妻として迎えた溫は、独りでに鳴る琴の話しをしました。良工は 「これは狐ではなくて幽霊の響きがあります」 と言います。溫が信じないので良工は自宅から幽霊の見える鏡を持って来させて確かめると、以前、趙氏の家で見た宦娘でした。宦娘は 「詩を書いた紙は自分が仲人代わりになろうと思ってした事なのにどうして怒るのか」 と言います。溫と良工は初めてその謎を知りました。宦娘は寂しげに 「あなた方 (溫と良工) は琴瑟の交わりですが、私は死んで百年になるあの世の者ですからお別れします」 と言い、ご縁があれば来世でお目にかかりましょうと言い残して去っていきました。 少し読みにくい箇所もありましたが、死んで百年という文字に絡め取られて読書感想を書きました。ふと、漱石の 「琴のそら音」 や 「夢十夜」 を思い出したことも関係するようです。 死んで百年経っても妙齢の美女のままという表現は、谷川俊太郎氏の 「ぼく」 に通じるものを感じました。 |
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