2018年4月28日(土)〜5月6日(日) 
     四国 39番延光寺から67番大興寺まで・・・こども達と一緒に巡ったみち
 
          
69歳(もうすぐ70歳)

第3日目(4/30)  44番大寶寺〜45番岩屋寺

4/30行程表





 
4/30の地図




 
  さて、今日はこの旅最初の難関日です。道中ほぼ60qは登り坂と覚悟しています。しかし、押して上がる程の坂はないとも信じています。
午前4時頃起床。夜明け前の薄暗い道をコンビニへ朝食の買い出し散歩。レシートには- - - 04:14、海老とホタテの特製中華丼¥548、アクエリアス¥151、プレミアムどら焼き¥138、カロリーメイトチョコレート味2本¥108- - - を購入したことになっています。どんなものだったか覚えていませんし、どら焼きって食べたのかなあ・・・なんて感じです。丼は間違いなく食べた(筈)。
5:00には誰もいないフロントに鍵を返してホテルを出ました。こんな時間帯に走るのは何度か経験していますが、肌寒い中ライトを点灯し走るのは楽しくはありません。  
 
勾配図




 
 大洲へ入る前に登りがあります。夏用ウエアーは少し寒かったのですが辛抱できなくもないという限界前の微妙な気温。一気に下り坂にかかった時、うーん寒いなあ、暴風衣を着ようかな?まあ良いかな?と思案をしつつ発熱量ゼロで下っていましたが遂にギブアップ。上下重ね着をしました。着るのが遅かった代わりに脱ぐのは早かったですよ。 
大洲城遠望




 
 5:50 正面に大洲城が見えました。かつて右前方遠くにこの城を見て、歩く人に 「あれは何という城ですか」 と尋ねて呆れられた事を思い出します。内子フレッシュパークは時間が早くて弁当は売っていませんでした。道を尋ねてコンビニまでUターン。しかし来るときにはコンビニはなかったと不思議でした。でも、コンビニから戻るときは同じ道を通れない事が分かり納得です。7:08とりあえず海苔弁当とお茶をリュックへ収納。小田の郷を目指します。いよいよ難所ですね。それに曇っていてなにやら雨の気配がします。 
勾配図






 
 8:20頃 小田の郷せせらぎ に到着しました。余程疲れていたのか、直後に撮った写真は数枚がピンぼけでした。 
道の駅小田の郷せせらぎ





 
道の駅小田の郷せせらぎ



 
 しかし道の駅の名称どおり清流と高ェ心地よい景色になっていました。店内に入って食べるものを探しますがありません。コンビニ弁当は万が一の場合に備えて残しておきたい。食堂のうどんを食べようと思っても10時からということです。それまでは待てないしと思案をしていると、「あっ!あそこなら9時から食べられるかも知れない」 とレジにいた若い女性が電話をしてくれました。「9時少し前くらいなら良いですか?。そうですお遍路さんです」。随分気が利いて優しい。私は 「ありがとうございます。じゃ少し時間待ちをしてから行きます」。
教えられた道を進んで行くとすぐ近くにお店がありました。小番食堂です。何かしらそれほど人家もないのに成り立つのかなあ、何て余計な心配もよぎります。店内に入ると とても物静かなご夫婦が切り盛りをしておられます。
「先ほど道の駅から電話をしてもらった者です。食べないと走れないし食べ過ぎても走れないので残すかも知れませんが」と言葉を添えてうどんを注文しました。芸能人の色紙も何枚かありました。支払の時に●●円ですと言われて払ったのですが、なにかお品書きにあった値段よりもかなり安くお接待されたような気がします。やはり疲れていたのか、そう思いつつもそれを言葉にできず、何となくごちそうさまでしたとだけ言って出ました。すみませんでした。戻って広い道(R380)を右へとれば良いのですが、小雨が落ちてきました。左、道の駅へ返して上下のウエアーを着用します。自宅に居るときならこんな天気には絶対走りませんが、旅に出てしまえばそんなことを言っている余裕はありません。
 屋根の下で身繕いをしペダルを回し始めました。
 
勾配図




 
坂道をかなり登った頃、食堂へ電話をしてもらう前に言葉を交わした歩きお遍路の男性に追いつきました。「お先です」。そう声をかけて彼を後にします。相当な登り坂道です。自分の自転車は時速12〜3q、彼は早くても5q位でしょう。彼とも宿が同じで無い限り今生では再会することは無いだろう、そんなことを考えながらペダルを回し続けます。こんな風に書いていると、お読みになる方々は何気なく読み過ごされると思いますが、そんな楽な道ではありません。吸って吸って...大きく吐いて、吸って吸って...大きく吐いて。自分でも、この歳になって肺活量が増えるんじゃないか?とか心臓が丈夫になるんじゃないか?と つい都合良く妄想するような呼吸と鼓動です。足は踏み足引き足の連続。息遣いは周りに他人がいないから良いようなものの、大丈夫かな?という心配の目でみられること間違いないほどの大息です。でもご心配なく - -死ぬかも- - と考えた事はありませんでした。頭の中にあるのは呼吸とペダリングの方法、更には辛いのは承知で来ている、自転車は必ず山門まで走らせる、古希の記念を兼ねて自分の生き様を確かめているという己への言い聞かせだけでした。真弓トンネル付近にお遍路さん用の休憩所がありました。先客に挨拶をして自転車を停めます。ハンドルのトップバー下にチラッと小さな金色の物が見えるのは鈴です。月の沙漠ではないけれど、金と銀の鈴なんです。唯一お遍路さんの風合い。振動で小さな優しい音色を出します。 
真弓トンネル付近案内図





 
 真弓トンネル付近と書きましたが、記憶を辿って間違いないと結論づけるのに随分時間がかかりました。上の写真(10:37)を見てもなかなか記憶と一致しません。先客は昨夜ここで夜を明かしたとのこと。大きな荷物を背負った同じような年格好の元気そうな男性でした。少し話しをしてから互いに別方向へ別れを告げ、身支度を調えてさあ出発という時に下から見覚えのあるお遍路さんが登って来ます。まさか?途中で追い越したお遍路さんではないだろうな?。そう思って見ていると向こうから声をかけてくれました。私は狐につままれたような気持ちで彼を見ていました。「どうやって来たんですか?まさか走って来たんですか?私が幾ら遅いと言っても時速10qはでていますよ」。彼は笑いながら「いえ、あなたは曲がりくねったのぼり坂を来られたでしょう。私はショートカットする遍路道があるのでそこを通ってきました」。その時の私にしてみればどこもかしこも曲がりくねったのぼり坂だし、疲れた頭では彼がどこを指してそう言っているのか分かりません。てきとうに生返事をするばかりで、また彼を後にしました。勿論それ以後再会することはありませんでした。
 このときの記憶と上の伊予路看板写真の場所や時刻が一致しなかったのです。行程表やデジカメ写真、PCの地図ソフト更にはスマホのマップを何度もなんども記憶と照らし合わせながらこのサイトを書いています。伊予路の看板写真を繰り返し見ていてやっと三人が邂逅した場所だった事を思いだしました。まちがいなく内子町側のトンネル出入り口付近に休憩所がありました。
- - - 大丈夫でしょうか。5月6日までうまく記憶を蘇らせることができるでしょうかね。 - - -
 
真弓トンネル付近地図




 
私たちはそれぞれのペースで自分の路へ分かれました。久万高原町へ入って暫く進むと落合交差点を左折しR33を走ります。もうそれほどの坂はなかったと記憶し(感じ)ています。 
久万高原





 
 これも接待の一つでしょうか、岩肌から清水が流れ出ていました(11:15)。今日の予定は充分消化できそうですので一休み。冷たい水が気持ちよく喉を通って行きます。ここから大寶寺まではさほどの登り坂はなかったような気がします。人間の感覚とは恐ろしいもので、あまりにもキツい坂道ばかりを走っていると少し緩やかになれば坂ではないような気がします。つまり、坂道としての記憶が無いのです。昨年、足摺岬の金剛福寺で出会った青年が 「宿毛まで坂なんて全然無いですよ」と言っていたのが分かる様な気がします。人家が増えてきて消防署や役場の建物が目に留まりました。地図では何度も繰り返し見た懐かしい風景です。久万中学校前交差点を右折、道標に従って公園付近を更に右折し少し坂を登ったような気がします。         12:09 44番大寶寺に到着。 
44番大寶寺



 44番 大寶寺
 
 参拝後、今日の宿の前を通って45番岩屋寺へ向かいますが、背中のリュックを預けて行こうと思いました。45番までの往復には格別必要なものは入ってないし、財布も小銭入れさへ持っていればいいかとばかり預ける事にします。 
勾配図




 
 身軽になって少しの間登り坂でしたが、その後は快適な下り坂です。気持ちよくタイヤの転がるに任せて風を感じていましたが、- - - うん!?これだけ気持ちが良いと言うことは....帰りは... - - - もう考えない事にします。 
45番岩屋寺


 45番 岩屋寺 参道
 
45番岩屋寺



 
 岩屋寺では何人かの男性が橋の手前で車を誘導していました。駐車場が狭い道を登った所に3カ所ほどに分散してあります。どうやら行き違いの爲に誘導しているようです。登り切った駐車場脇の桜の木に倒れないように紐で固定しました。駐車場係りの女性(所有者)が話しかけてきたり、同僚女性に 「ほら足が凄いわ、モモなんかぱんぱん」といっています。そういえば二日目辺りからそんな自覚があります。多少筋肉も増えたかもしれませんが、それよりむくんでいるのでしょう。短パンの裾1.5p位はほんの少しだぶつき気味で、女性服の飾りっぽかったのが、ピッタリと収まって多少格好良くなっています。更におまけがあって、自宅を出るときにはあったお腹周りの内脂肪が、かなり減ってウエアーを着ていても気になりません。流石に修行の道です 
45番岩屋寺



 45番 岩屋寺 山門
 
山門を潜ってからの道が大変です。30分はかかりませんでしたが、結構キツい坂です。 
45番岩屋寺




 本堂と阿弥陀窟
 
 上の写真奥に見える梯子を登ると岩の窪みに小さな舞台がしつらえてあります。何人かの人が登っていましたが私はパスしました。降りてくると下から見覚えのある若い女性が上がってきます。向こうから明るく 「こんにちは」。私は思わず 「何処かで見かけましたよね」というと 「先の大寶寺でもお会いしました」との事。こんな爺さんに独身女性(多分)が声をかけてくれるのも遍路道ならではでしょう。小さく並んだ店から 「どうぞ おひとつどうぞ」と若い女性の声がします。前を歩いていた幾人かは通り過ぎましたが、私は 「お接待ですどうぞ」 という若くて可愛らしい女性(いやイヤ、声)に惹かれて手を出すと、先に通り過ぎた人達も戻ってきて手を出しています。私の心の方が清純ですよね?。美味しい飲み物でしたが荷物を増やせません。山あいの風景にも癒やされました。 
45番岩屋寺




参道から振り返る景色
 
 さ〜て、怖〜い帰り道です。あの坂を登らないと宿にはたどり着けません。しかしキツいなあ。でも反面不思議なくらい足が軽い。石段を沢山上がったのでペダル用の筋肉が休まったのかなとも思いました。途中は一度だけ水分補給のため足を止めました(そういう事にして)が、休憩することもなく宿に到着。お宿は大変きれいでお遍路さん達にも好評判のようです。宿の方々との距離感も適切なように感じました。
 部屋は懐かしい響きの 「杏」 でした。食事は大部屋で全員が一緒に戴きます。あちこちで雑談も始まりました。「もう●回目です。今年は逆打ちをしています。」 「へえー、それは難しいでしょう」 「そうなんです、道標も整備されていないし分かりにくいんです。」 「逆打ちをした人は皆さんそう言われますね」 「
リーさんはどちらから?」 と逆打ちの父さんがふくよかな女性に質問。どうして名前を知ったのかなと思っていると、銘々の前に名札が置いてあります。「台湾です。明日は列車で移動しようと思っています。」 列車?こんな場所に列車が走っていたかな?と考えていましたが、後日再開した折りの会話で、バスを列車と言い違えたようです。このリーさんは日本人女性と並んで食卓に着いておられたのでお連れさんかと思っていましたが、一人旅でした。話しの口を切った年配男性は、いつもなのか今日は特別なのかテンションが高い。私は横に座った男性が大変紳士的な雰囲気を醸しておられたので、 「失礼ですがあなたは先生か何かですか?」 と尋ねると、 「いえ、違います」。 しかしなかなかの雰囲気で、きっとそれ相応の仕事をなさっていたのだと感じました。
 「話しを聞いていると何度回ったという話しをよく耳にしますが、なぜなんでしょうね、何度も繰り返し回るというのは。」という質問に、「実は私も五度目なんです」 とおっしゃる。ある年の巡礼時にスペイン人のお遍路さんと道中何度も一緒にあるくことになり意気投合。いつかスペインの巡礼みちを歩きたいと話すと、その時は是非ご一緒したいから連絡を下さいと言われたそうです。うーん、そういう巡り会いや自転車では走れない遍路道での景色、日常生活から離れた経験が忘れられなくて結果的に何度も回ることになるのかも知れないなと感じました。テンションの上がった男性が次第に落ち着いてきた頃私は席をたちました。ご馳走様でした。部屋に戻ってから座卓に置いてあったノートを開いて目を通します。大勢の方々が思いを書いておられました。今日はまだ 「こどもの日」 を手渡すご縁がなかったことから、自分も何か一言と思い、書くと共に裏面にこどもの日を貼り付けることにしました。ここに貼っておけばきっとご縁のある人の目に留まるだろう、と念じつつ。
明日は三坂峠までが少し登りで後はほぼ平坦です。札所も六寺を予定しています。窓は網戸にして就寝しました。
 
   第1日目(4/28)  輪行〜39番延光寺〜40番観自在寺へ戻る

    第2日目(4/29)  41番龍光寺〜43番明石寺へ戻る

   第4日目(5/1)   46番浄瑠璃寺〜53番円明寺へ

   第5日目(5/2)   54番延命寺〜59番国分寺へ

   第6日目(5/3)   61番香園寺〜64番前神寺へ

   第7日目(5/4)   60番横峰寺へ

   第8日目(5/5)   65番三角寺〜67番大興寺 そして 金刀比羅宮へ

   第9日目(5/6)   いよいよ帰途へ そして 感じたご縁と私の遍路



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