《私の本棚 第340》 令和6年7月22日 号 「生きる歓び」 エミール・ゾラ 作 |
ルーゴン・マッカール叢書の第12作目に成ります。しかし、私には大変読みづらいものでした。ウィキペディアに拠るとこの作品は1884年作で、当時フランスにおいても隆盛を誇ったショーペンハウアー哲学(厭世主義)に対するゾラの文学的回答と書かれています。題名からもう少し心晴れやかに頁を繰ることができる作品かと思っていました。冒頭のショーペンハウアー云々は格別目にしていませんでしたから尚一層の感じ方かも知れません。 幼くして両親が亡くなったため、成人するまでの間莫大な財産を持って縁がある家に保護引き取られた主人公の少女ポリーヌ。引き受けた家もそれなりの財産家でした。 論創社の出版で418頁、11章構成で綴られています。読書にあたっては感想文を書くときの事を考えて、全体を思い返す事が出来るように付箋を付けておく習慣になっています。 (但し、感想を書き終えれば取り除きます) 第2章の終わりに近づいた68頁の所で、次のように話しが展開していきました。 このところの付箋には 【ここからは嫌な流れの展開を予感】 とメモがあります。 ・・・・・・ そこで彼女はポリーヌを振り返った。 「そうなのよ、ポリーヌ。お前が兄さんに三万フランを貸してあげればということなのよ・・・・・・これまでにない投資だし、お前のお金におそらく二十五パーセントの金利がつくでしょう。つまり兄さんはお前にも利益をもたらそうとしているのよ。これらのうまい儲けのすべてを他人のポケットに入れるのはとても残念ね・・・・・・でも私はお前のお金を一スーたりとも危険にさらすつもりはないわ。神聖な預かり物だし、上に (※2階ポリーヌの部屋) そのままにしておき、手つかずで返さなくてはね」 ・・・・・・ 当時の3万フランは今の日本の価値として3千万円位らしいです。持ってきた財産の一部ですし、その重みは理解できないような年齢でした。兄さんというのは引き取った家の息子で実兄ではありません。悪人では無いのですが、何をするのも中途半端で気移りが激しく家の財産を食いつぶしています。 私はこの様な人の金を食い物にする類いの話は大嫌いと言うか虫唾が走ります。しかし実話では無く小説ですから最後まで読み終えようと努力しました。努力し第4章の終わり・154頁まで耐えましたがギブアップ。やっと古書店で手に入れた高価本でしたが喜寿が遠くない私には致し方無いでしょう。最後のページ辺りを開いてみると、ポリーヌは他人からみれば大変な不幸に在りながら、心は幸福に包まれて居ます。まさに 「生きる歓び」 そのものです。その事から冒頭のように 「ショーペンハウアー哲学 (厭世主義) に対するゾラの文学的回答」 と評されているのでしょうね。 私が 『大嫌い』 と言うのは、何となくあれが有るのかなと思うことがあります。でもその結果、私の心のそれは当然で止むを得ないこととして捨て置きましょう。読む順序がショーペンハウエルの次にこの作品なら、逆にある程度心が晴れたかも知れませんね。読み切る自信のある方はご一読を。 未読の書籍 「夢想」 「壊滅 (昭和16年発行・漢字が難しく恐らく読めない)」 「パスカル博士」 は古書店で探し求めて本棚にあります。しかしこの作品の様に苦しいものに行きあたって仕舞うと、残るこれらを開く事ができるかどうか?不安ですね。 せめて写真だけでもすこし華やかにしましょう |
左 法輪寺 十三まいりの後 右 平川廃寺跡・八重桜 |
雫石七ツ田・弘法桜 ・ 樹齢800年 |
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