《私の本棚 第237》   平成28年8月号

     「アーサー王物語」  トマス・ブルフィンチ 著 

 元のアーサー王物語は六世紀頃のブリテン (英国) の国王アーサー伝説を書き綴った騎士物語ということです。元の物語は大部で分かりにくいものであったのを、著者が現代人向けに整理し読みやすくしたものということです。私がこの本を読む切っ掛けはカズオ・イシグロ氏の 「忘れられた巨人」 でした。これを読むと同じ作家の 「日の名残」 の背景にあるものが少し感じられました。しかし忘れられた巨人の背景が分かりません。そこでアーサー王物語を読むことになりました。
 英国版の 「日本書記」 とでもいうような位置付けでしょうか。悪魔の精に近い父親をもつ超能力者のマーリンがアーサー王の顧問官になります。円卓をしつらえ、円卓の騎士を決定します。この円卓の騎士の中に 「忘れられた巨人」 に出てくるガーウエインが登場します。ガーウエインはアーサー王の従兄弟にあたります。この円卓の騎士達が誓った内容は凡そ次のようなものでした。
『互いに自分の生命を賭して助け合うこと。それぞれ最も危険な冒険を試みる事。必要な時には修道士のような孤独な生活を堪え忍ぶこと。招集を受けた場合はただちに駆けつけ戦闘の用意をすること。戦闘にあたっては、夜の訪れによって引き分けとならぬ限り、敵を打ち破るまで絶対に戦闘から身をひかぬこと。等など』。 何やら日本の武士道やドンキホーテがイメージされます。
 白龍や霧、修道院・修道士・湖などカズオ・イシグロ氏作品の底に流れるものが多少は垣間見えます。しかし、ガーウエインと暫く旅をしたアクセルが誰を或いは何を意識した設定なのかは不明のままでした。
 
伊吹山、あんな本こんな本




  伊吹山 

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