《私の本棚 第277》 平成30年12月23日号
2005年作。長編第6作目になります。登場人物の 「わたし」 を表現するのはやはり見事です。異色作品ですし、作者の扱う題材や表現方法は、どこからこんなアイデアが浮かぶのか不思議です。人間はどのような職業に就く人でもその思考は一定の方向性があるはずです。 この人の作品は会社でいえばトップが変わった位ではここまでの事は無いだろうというような大きく劇的な変化があります。今回はこういう作品を書いたから次は全く違うあんな物をという発想であることは間違いないと思いますが、しかしだからといって全く違う雰囲気の作品が描けるというのは作家仲間の人達も脱帽でしょう。近未来を先取りするようなSF作品。いやSF作品と言うよりも、人間の心の中に潜む 「こんな時代はまあ来ない」 という漠然とした思いに対して、そうとは言えないという問題提起をしています。 この作者は作品を書き始める前に、頭の中に映像作品を完成させているのでしょうか?。かつて聞いた事があるような無い様な話しに、「作中の登場人物はその名前によって勝手に性格が形作られ、作者の当初の考えと違う方向へ行ってしまうことがある (いささか姓名判断的) 」 という記憶があります。しかし、この作者が登場人物に割振った役割はぶれていないと感じます。ぶれないと言うことは、最初の一言から最後の締めくくりまでイメージを完成させているとしか思えないのです。ともあれ、一人の作家がこれほど雰囲気の異なる作品を生み出すことに感嘆です。 |
花ニラ |
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