《私の本棚 第217》   平成27年2月号

     「人類20万年・遙かなる旅路」   アリス・ロバーツ 著

 うーん、何故このような本を読むんでしょうかね?。なにが面白いのか上手く説明できません。古代・近現代の歴史と異なって、そこに何の利害もないからでしょうか。何らかの文字文明の時代なら、書かれていることが確かであるとか歪曲されているとか色々と検証も為されるでしょう。しかし、残されている物がごく僅かでそれも人骨化石。そうなると、いかに科学的に何万年前の化石であると判定できたところで、生の人間の営みは見えてこない。それでもやはり何かしら興味がある。
 著者はイギリスの医師であり考古学者であり、多方面に亘って活躍している女性ですが、写真を見る限り優しそうで親しみを感じます。誘われて6ヶ月間アフリカから南アメリカまで人類の足跡を辿って旅をされています。年代誤差が1〜2万年などと事も無げに表現されています。ウッカリ 「ふーん」 と読み流していますが、比較的身近な5千年前の事と言えば 「アイスマン」 しか思い出しません。そのアイスマンとて、偶然アルプス氷河で氷浸けで発見されたわけで、何らかの理由で矢で射殺されたらしいと分かるばかりです。何十万年も過去の更に誤差が万年単位では、空想の世界に遊んでいるような不思議な感覚に襲われます。この本ではなく偶々TVで、日本人は海藻を消化できるが欧米人は消化できないと知りました。適応した腸内菌が欧米人には無いそうです。これも人類が遙かな旅路の過程や結果獲得したモノなのでしょう。
 中でも面白いというか、中国らしいと感じる記述がありました。上海の復旦大学遺伝学研究所の金力 (ジン・リー) 教授との会話です。中国では、中国人は100万年前に中国にいた 「ホモ・エレクトス」 を起源に持つという愛国的理論があったそうです。で、それを証明すべく金教授が大規模プロジェクトを立ち上げて尽力したそうですが、結局は人類アフリカ単一起源説が正しいという結論に到ったということです。そういう愛国的理論があったことを初めて知りましたが、そこまで行くと何だか気の毒という感じがしないでもありません。
 
水芭蕉、恐山、あんな本こんな本



 恐山

 水芭蕉

 
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