《私の本棚 第267》   平成30年5月15日号

   「山中與幽人對酌」     李白 作

 
 この作品は随分久方ぶりに中国古典を読んでみようという気持ちが起こり、書店で新たに買い求めた一冊から選びました。岩波文庫 「李白詩選」 (松浦友久氏編訳) になります。 高校生当時の私が強く引きつけられたのは何故でしょうか?。よく分かりませんが、「人生論ノート」  にも書いたように思いますが、私は少年ながらに人におもねることなく流されることも無く、周囲がどうあっても自分は自分でしかないという生き方が強くあったように思います。どこかそっくりな感じのする李白の気概をこの詩から感じていたのでしょうか。

編訳者の訳詩と注は次のとおりです。


       ふたり対 (むか) いあって酒を酌ぐ傍らに、山の花が美しく咲いている。
      一盃、一盃、もう一盃。
      私は酔って眠くなってきた。あなたは、ひとまずお帰りください。
      明日の朝もまた、お気持ちがあれば、琴 (こと) をかかえて来てください。


      注:幽人 (ゆうじん) =世俗から離れて住む隠者
      卿 =対等以下の者を呼ぶ代名詞

  李白は杜甫とも大変親しかったようです。そして杜甫は 「飲中八仙の歌」 と題して、見事に李白を詩っています。

      李白は一斗 詩百編
      長安市上 酒家に眠る
      天子呼び来たれども 船に上らず
      自ら称す 「臣は是れ 酒中の仙」 と

  一盃一盃復一盃の型破りな句と相まって激動の一生を送った詩仙を彷彿とさせます。

「琴を抱いて来たれ」 の句から
深草アキ氏の秦琴演奏を思い出します。李白の言う琴が同じ形態の琴であったかどうかは別にして、その演奏を思い起こしながらこの詩を読むのも一興です。お酒を飲める人なら猶のことでしょう。

この文庫本には李白の主要な作品が沢山掲載されていますから、皆様も書店で手にとって読まれることをお勧めします。

 
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 飲める人が羨ましいですね
 
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