《私の本棚 第342》   令和6年8月7日 号

 
「愚かさという煩悩」 佐々木 閑  著 
 京都新聞七月十四日の 「天眼」 を読むと、読み手に拠って解釈の広がる文章でした。先生花園大学の特別教授をされています。
 仏教では人の心には 「煩悩」 があると言われているが、その意味を明瞭に知っている人は案外少ない。それは自分自身にいずれ苦しみをもたらすような心の働きである。いつも何かを憎んだり欲張ったり、或いは何でも都合良く根拠もないのに 「きっと思い通りになるだろう」 と考えて行動し、結果、うまくいかなくて苦しむというような自分勝手さが煩悩だと仰っています。
 その先生が自分自身の 「愚かな行動」 として、私たちが笑って読めるように話されています。十数年前にご夫婦でリュックを背負ってポルトガル旅行をされました。大西洋の崖っぷちに可愛い灯台が立っている景勝地に立ち寄られた時のことです。奇麗な素晴らしい景色を堪能している時、崖の岩肌に
オレンジ色の矢印が書かれていることに気づきました。更に進めばもっと凄い景色が広がるのだろうと思いました。次々に書かれているそれに従って、二人で進んでいくとどうにも身動きできないような場所まで来てしまいました。其処まで来てやっと矢印は だと気づきました。判った途端、恐怖心に包まれながら這這(ほうほう)(てい)で戻り、ホテルに帰り着いたのは夜。悔やむ心と無事戻った嬉しさから、真夜中に交わしたビールはほろ苦かったそうです。

 更に読者には少し心が軽くなるようにとの配慮でしょうか、 『 【
儲かります⇒】という看板は至る所に出ていますから、くれぐれもご用心下さい 』 と締めくくられていました。
 
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 ※本文中の「崖っぷちの景勝地」
   とは 「ロカ岬」 でしょうかね?

 

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