《私の本棚 第273》   平成30年9月9日号

    「長干行」   李白 作詩

 
 
 
 
  伊勢物語

 このサイトをアップしてから二日目に面白い気づきがありました。蛇足になりますがご紹介します。
岩波書店の 「図書」 を購読していますが、その2018年9月号に山口信博氏の 「書物と出会う」 という一文が掲載されていました。氏はグラフィック・デザイナーですが、あるとき古書店で捜し物をしていて偶然目にした 「包之記」 (ツツミノキ) という折形について書かれた書物に出会われたそうです。とことん突き詰めなければ気が済まない性格の方のようで、神職の資格まで取られました。この文章の中で氏は 「熨斗袋」 について述べられています。
 現在では熨斗袋を略して 「のし」 と呼んでいる物の始まりまでを考察しておられます。熨斗は本来薄く伸ばした鮑を紙で包んでそれ自体を贈り物にしたが、時代が下って贈り物に添える習わしとなり、現代では鮑は用いずに黄色い紙を代用品として用いられています。今でも本物の鮑を用いて熨斗作りをしている所があります。それは伊勢神宮です。周辺の漁村に熨斗を作る神聖な作業所があります。
 では何故アワビだったのでしょうか? 氏はこのように綴られています。

----鮑は死と再生の豊穣をたたえる母性たる海の象徴と考えられ、さらに女性性 (形状) をもっているからでしょう。・・・・・・海=母=女性=鮑と・・・・・。----

そういえば 「磯の鮑の片思い」 なんていう言葉もありますね。男女が出会って結ばれれば新しい命が生まれます。男子なら息子 (ムスコ)、女子なら娘 (ムスメ)。これは単なる言葉遊びではないと。更に、飯の 「おむすび」 と 「握りずし」 を例に挙げられています。おむすびは両手の作業であり、男と女・左手と右手・陰と陽。素朴な信仰が存在するようです。更にこの 「包之記」 には 「蝶花形」 があり、今でも三三九度の時長柄の銚子と提 (ひさげ) にはこの形が施されているようです。

 これらの事から、今回ご紹介した長干行に出てくる ----- 八月胡蝶來  雙飛西園草  (3/4頁)----- のイメージが膨らむとともに伊勢物語に出てくる ---- 
山城の井手の玉水手にむすび  ---- もなお一層心に染みてきました。
 
あんな本こんな本、魚見台の夫婦




 左と中は

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