《私の本棚 第272》   平成30年8月13日号

   完全版 「あらしのよるに」   きむら ゆういち 作

 8月11日号に続いて、夏休みにピッタリのふたつ目の作品です。
この世界には仲良くなりたくてもなれない者同士がいます。理由は様々でしょう。国や所属する組織の違い、価値観の相違や男女の考え方の相違、。上司と部下の上下関係、年齢の開きによる理解不足。取引に於ける利害関係の齟齬。そんな垣根を取っ払えば、個人的にはとても親密に話し合える間柄になれるのに見えない壁が立ちふさがっていることが往々にしてありますが、ある日あるとき思いがけない事を切っ掛けにして相手との距離がぐんと縮まることもあります。どうすれば、どんな努力をすればそんな壁が無くなるのでしょうか。そうですね、恐らく対話しかないでしょうね。例え嫌な相手とでも取敢えず話してみる。お互いに鎧兜で身を固めるのではなくて、リラックスして何か共通の事を話題にして言葉にする。噛み合わないことが分かればそれはそれでもいいし、あれ?この人前から思っていたのとは少し違う良いところがあるって感じることがあればもっといい。何が何でも無理矢理に仲良くなる必要も無い。けれど、話していて何か少しでも自分が学ぶことがあれば大いに結構ではないですか。
 国には国の成り立ちや未来への展望もあります。男女間のことでは、お互いに相手の事を 「この人の優しいところがいいなあ」 と感じたとしても、一方のその根源は 「癒やされる」 なのかも知れないし、相手方は全く異なって 「自分の思い通りになる」 という事かもしれません。
 上司は常に組織や部下をリードしなければならないと考えるのが普通の傾向でしょうから、部下から見れば 「何かしら近寄り難い」 と見えてしまうかも知れませんね。年配者、いや格好をつけないで 「老人」 は長年生きてきた経験から、若い人達に伝えたい事が沢山あるかも知れませんが、これからという青年達にはその言葉は残念ながら 「煩わしい」 としか感じないかも。食うか食われるかの商取引世界では、お互いに腹を割って話せるようになることは夢の又夢に近いでしょうね。
 この作品は童話絵本です。中三の孫娘が合唱団に入っていて、この童話をもとにして作られた曲を演奏するために読んでおくようにと言われたらしいのです。で、折角ですから私も読みました。登場人物ではなく登場動物は狼と山羊です。絶対に仲良くなれない者同士ですが友情が芽生えていきます。話しも絵もとても楽しいものでした。
 それで、2018こどもコーラス・フェスティバルin 京都 第32回少年少女合唱祭全国大会 (8/5 ロームシアター) へ聴きに行きましたが、残念ながらこの曲は秋の発表でした。この童話がどんな曲になるのか楽しみです。
 
あんな本こんな本




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