《私の本棚 第258》 平成29年12月11日号
明治35年 高知県幡多郡生まれ。三島由紀夫氏はこの作品をこう評しています。 「『野』は今度読み返してみて、傑作と呼ぶに躊躇しない。この無内容、この無気力の、しかし張りつめた文章による充実した表現は、・・・」 。 ............... 褒めているのか貶しているのか分からない。 傑作と呼べるのかどうかは別として、まさにその通りの作品です。尾崎一雄氏の 「虫のいろいろ」 は作者の葛藤をくみ取ることができますが、この作品からは格別なものは何一つ感じられない。近年は健康ブームでウオーキングやジョギング、軽登山やサイクリングなどをよく見かけますが、そんな志は何も感じない。言ってみれば、格別に物事を考えた事のないような人が金は無いが暇をもてあましてウロウロとしている。見たままに特にそこから何か思索を深めるでなく、歩き・休み・眺めて家に戻る。雀の声を聞いても何の鳥なのか分からず、暫くしてからやっとそれと分かる。日頃からいかに注意力が散漫か推して知るべし。 自分の病と無収入から、長年生活を僅かでも支えようと頑張ってきた妻が神経衰弱で入院。退院を迎えた日、いつもぶらついている野を病院の車で戻って来た。それから幾日も経たないある日、私は夕食後祭り見物に出かけた。病気が重なるような年だったが、小さな熊手のお守りがどうしても欲しくなり買って戻り、来年は幸運を授かりたいものと言って高笑する。 なんと脳天気なダメ親父がいたものだ。ここまで何事も苦にしないならさしずめ 「果報は寝て待て」 を地で行っている。貧乏神も尻尾を巻いて退散、福の神も呆れておこぼれの福を置いて行ってくれるかもしれない。 |
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