《私の本棚 第170》   平成23年5月号

    「古代ローマ人の24時間」 アルベルト・アンジェラ 著

 著者はイタリアの国営放送の教育番組を担当、科学ライターとしても活躍中。

内容は絵空事ではなく、15年以上に亘り古代ローマ帝国の遺跡を研究し、その成果を纏めたものです。紀元115年のある日のローマを日の出時刻から午前零時まであたかもカメラが歩いているように紹介します。塩野七生氏がローマ人の物語を書いていますが、その一環として読んでみました。
 時代がこれほど遡っても、人間の生活というのは基本的にほとんど変わらないことを改めて認識しました。中でも印象に残った事をご紹介しますと、現在の子捨てと同じ様なことがあったことが一つあげられます。赤ん坊が生まれると父親の目前に置かれます。周囲が見守る中、父親が赤ん坊を高々とあげれば家族の一員となります。無表情で子供を抱き上げなければ捨てられます。認めない理由は、子供が多すぎる、不貞、子供の障がい等です。この子供は、赤ちゃんポストのような場所に放置されるか、乳の塔とよばれる円柱のそばに捨てられます。捨てられた子供は金儲け目当ての人間に拾われて奴隷や物乞いという類の商売に利用されます。更に悲惨な場合は、汚水やゴミと一緒に捨てられたそうです。これは特殊な事ではなく、日常的な風景であったということです。生まれたばかりの子供をどうするかという儀式は、南米の未開民族にもあったように記憶します。そこでは、ジャングルの草の上に寝かされた赤ん坊を母親が抱き上げて授乳しない場合は、高い木の上に置き去りにされます。蟻の餌にされるのです。
 又、大浴場が有名ですが、ここは現在の○○センターと称して温泉や遊技、食事等が楽しめる場所と同様であったようです。カラカラ大浴場は大変有名ですが、この本ではトラヤヌス帝が作ったトラヤヌス浴場が紹介されています。その広さと言うより広大さは、目の前にあるのではなく周りに広がっていると言う方が的確で、普通の公衆浴場が町外れの小さな公園とすれば、ディズニーランドと言うべきだと紹介されています。

  書物だけではなく、TV番組にすれば見応えのあるものになると思います。
 
氷室神社の桜、あんな本こんな本




 氷室神社

 


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