《私の本棚 第222》 平成27年7月号
御伽草子の中には馴染み深い物語がいくつか含まれています。鉢かづき ・ 物くさ太郎 ・ 一寸法師 ・ 浦嶋太郎 ・ 酒呑童子など題名だけでも絵本の懐かしい記憶が甦ります。御伽草子の時代は南北朝から江戸時代までの凡そ三百年とされています。公家や知識階級の読み物であったものが広く一般民衆にも読まれるようになったようです。 この中で木幡狐は憧れの公家の生活と一般民衆 (狐) を融合させたような話で、庶民に楽しく受け入れられたのではないかと想像します。木幡は現在の京都府宇治市の北部にあります。その北は京都市伏見区に接しており、有名な伏見稲荷大社総本宮も近く京の都も一体の地域です。かつて通った私の小中学校区の北端地域になります。 お稲荷様のお使いをする古狐が居り、その子ども達は皆才色兼備、並ぶ者の無いほどの者達です。中でもその内の一人 (一匹) きしゆ御前は図抜けており、大勢の男達から言い寄られても何ら気色さえ見せません。しかしあるとき、三位の中将・三条大納言に心を惹かれ首尾良く夫婦になり子をもうけます。 幸せな日を過ごしていましたが、子どもが三歳になったとき犬が献上されます。その犬を見たきしゆ御前は恐れてそそくさと木幡に逃げ帰ります。その後は尼になって静かに暮らしたということです。 初めて読んだ時、どういうパロディーなのか考えましたが、憧れの世界と自分たち庶民の生活を融合させた楽しい童話として幅広い層に楽しまれたと思います。 |
伏見稲荷大社 |
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