《私の本棚 第211》 平成26年9月号
本の表紙や帯に書かれた 「1万3000年にわたる人類史の謎」 や 「民族の盛衰を左右した要因とは何か?」 に惹かれて読みました。出版社のツボに嵌まったわけです。しかし読むと大変面白い。何かしら世界や地球が狭く感じるし、地理や歴史も違う面から目を向けることができるような気がします。高校生が学校で地理歴史の勉強をする前に読んでおくと良いようにも思います。スペイン人のピサロは、なぜインカ帝国皇帝アタワルパを打ち破ることができたのかという考察は面白い。その結論はそのまま引用すると
「ピサロが皇帝アタワルパを捕虜にできた要因こそ、まさにヨーロッパ人が新世界を植民地化できた直接の要因である。アメリカ先住民がヨーロッパを植民地化したのではなく、ヨーロッパ人が新世界を植民地化したことの直接の要因がまさにそこにあったのである。ピサロを成功に導いた直接の要因は、銃器・鉄製の武器・そして騎馬などにもとづく軍事技術、ユーラシアの風土病・伝染病に対する免疫、ヨーロッパの航海技術、ヨーロッパ国家の集権的な政治機構、そして文字をもっていたことである…」 と。 また、コルテスは人口数百万人のアステカ帝国を征服するために600人のスペイン兵士とメキシコの海岸に降り立った。この時の勝利は軍事力ではなく、一人の奴隷がメキシコにもたらした天然痘の大流行のおかげであり、1520年には2000万人いたメキシコ人は1618年には160万人まで減少したとしている。 農業技術や文化、技術発明なども南北への伝播は困難で東西への伝播は非常に速かったとしている。なぜなら東西の隔たりはは気候が似ているので農業技術や作物その他の発明が利用し易い地域へ広がり、南北は気候が余りにも違いすぎて伝播しづらいあるいはしなかったと。 このような見方で世界を見ていくと、人種による優劣など無いというのがよく分かります。もっとも今は人も地球規模で移動があり、TVを見ていても何となく分かるわけですが、この本を読むと一層明快に理解できます。 |
空蝉 |
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