《私の本棚 第161》 平成22年7月号
森の番人がある日、鷲にさらわれて持ってこられた子供が木の上で泣いているのを見つけます。番人は連れて帰って自分の子供のレン坊と一緒に育てることにしました。森でみつけたいきさつから
「みつけどり」 と命名しました。みつけどりとレン坊は大変仲良く育ちます。ある日料理番のお婆さんが、手桶を二つも持って何度もなんども井戸から水を運んでいるのをレン坊が気づいて訳を聞きます。お婆さんは明日の朝早くお湯を沸かしてみつけどりを釜ゆでにすると言います。それを聞いたレン坊とみつけどりは夜の間に森へ逃げ込みました。お婆さんは三人の下男を使って二人を追い掛けるのですが、二人はバラの木と花に化けたり、教会とシャンデリヤに変身したりして逃げます。ついにお婆さんがしびれを切らして自分で捕まえに来ますが、みつけどりは池に変身、レン坊は鴨に変身して、お婆さんは溺れ死んで助かりました。 お婆さんが魔女なのか、レン坊とみつけどりが魔法使いの子供なのかはっきりしませんが、昔むかしの子供達はわくわくどきどきしながら話を聞いていたのだろうと思います。 詳しく感想を書こうとすると、丸写しになってしまいそうな短い物語です。おや?と思ったのは最後の 「この二人は、死なけりゃあ、まだ生きているよ。」 という言葉でした。 第59号で紹介したハンガリー民話に同じ言葉が頻繁に出てきます。ハンガリーとドイツの間には、チェコとオーストリアがあります。この話はヘッセンのシュワルム地方で採集された話として紹介されていました。チェコやオーストリアの民話は読んだことがありませんが、恐らく同じ様な語り口があるのだろうと想像します。日本の古事記の 「夜見の国」 にも同じ様なモチーフがあるそうです。 童話は夏の寝苦しい夜にお勧めです。 |
薔薇の花 |
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