《私の本棚 第297》   令和3年1月17日号

    「雨月物語 巻之四 蛇性の婬 (上田秋成 作)」 
               岩波書店・日本古典文学大系より

  第281号でお約束の雨月物語から蛇性の婬を掲載します。
上田秋成は1809年に京都の百万遍(京都大学近く)の羽倉信美邸で没し、行年76歳との事です。
作者はこの題材を中国白話集の 「白娘子永鎮雷峰塔」 から採っていて文章もほぼ同じという事らしい。白話小説というのは中国の口語による小説をいい、最も有名なのは四大奇書と称される「三国志演義」「西遊記」「水滸伝」「紅楼夢」が挙げられています。紅楼夢も読みましたが読書感想としては掲載していないようです。 似たような物語としては「鬼趣談義」や「聊斎志異」等などがあります。
 和歌山県新宮市三輪崎の大漁師の網元に三人目の子供で二男として生まれた豊雄が主人公です。太郎と呼ばれる長男の●● (かつての続柄呼称決まり) ・二郎と呼ばれる長女の●● (これもかつての決まり) ・三郎と呼ばれる二男の豊雄 (これもかつての決まり) の三人きょうだいです。あるとき出掛け先で雨に降られた豊雄は雇われ漁師のあずまやで雨宿りをしますが、そこに心が震えるような女性が軒先を借りにきます。ひとときの後豊雄は自分が借りてきたた傘を貸して送り出しますが、彼女を忘れることができずに傘を返してもらう事を口実に聞いた場所へ出向きました。そこで夫婦の約束を交わすのでしたが、実はこの女が大蛇の化身だったのです。別れ際に(通い婚)名刀を贈られますが、これが神社に奉納された後盗まれたものと判明し、取り調べの過程で人間では無いことが判ったのです。
 姉の嫁いだ奈良県磯城郡大三輪町の石榴市 (つばいち・長谷寺の近く) へ難を逃れたのですが、その姉の嫁ぎ先でも遭遇。義父田邊は自分の知り合いに丁度良い娘さんが居るから、夫婦になれば何とか難を逃れられようと熊ノ道 (熊野古道) の芝の里から富子を娶ります。処が彼女にも邪淫がとりつくのでした。偶々、鞍馬寺の僧が熊野三山に詣でに来ており、この僧は流行病や祟りを祈祷で取り払うと伝え聞き、何とか助けてやって欲しいと義父は頼みましたが、僧は返り討ちに遭って絶命します。
 豊雄は諦めて邪淫の意に沿おうとしますが、富子の父親は和歌山県御坊市の道成寺の宝海和尚を知っているからと、近在の人が迎えに行きます。この和尚のお陰で富子に取り憑いていた大蛇の化身である邪淫は、鉢に封じ込められて道成寺の庭に埋められました。しかし程なくして富子も病に倒れ旅立ちます。
 実はこの安珍清姫伝説で有名な道成寺には土俗蛇塚が近くにあり、秋成はこの話しを巧みに混ぜ合わせて話しにしたようです。
狐や狸に化かされるなら何となく笑えますが、蛇は少し気持ち悪くて怖いですね。

 余談ですが、京都府精華町に 「石榴(ざくろ)」 という地名があり、その隣には京田辺市 (旧田辺町) があるのは、何か関連はあるのでしょうかね?
 

あんな本こんな本、八郎潟、蛇 



 八郎潟の桜並木を見に行く途中
 一寸した休憩場所を見つけて
 立ち寄ると、沢山の蛇が日光浴散歩
 の最中。
 私の気配を感じてのそのそモゾモゾと
 石積みの間に潜り込んでいました。
 私も大方の人と同じで好きではないの
 ですが、思わず撮った写真を利用します。

あんな本こんな本、八郎潟看板 



 蛇の写真広場にあった看板
あんな本こんな本、大潟富士看板 




 日本一高い山には登った事がない
 ので、日本一低い大潟富士には
 登頂しました。


あんな本こんな本、寒風山 




 寒風山から日本海の眺め


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