《私の本棚 第246》 平成29年4月21日号
なぜこの本を読もうと思ったのか? それは読まずに何年も書棚に置いてあったから。では何故書棚に置いてあったのかと言えば、小学生の頃に読んだ作品をもう一度読みたかったから。しかし、最初の数頁を読んでは投げだしを何度か繰り返していました。今回はある種の必要に迫られて読了しました。初めの数十頁は修行者の心境でした。想像してみて下さい、七十歳に近い爺さんが十代の少女四姉妹の物語、Little
Womenを読むのですからねえ。 子供の頃にどんな感想を持って読んだのかは全く記憶にありません。しかし数十頁に亘るいくばくかの修行を乗り越えると、今日でも世界で多くの読者に読み継がれている理由が見えてきました。そこには大きな隣人愛と、更には東洋人の感覚だと思っていたものが展開されています。 足るを知る・・・母親が子ども達に話して聞かせる場面があります。自分たちが持っている沢山の感謝すべきものに気づかずに、あんなものがあればこんな事ができればなどと、無いものばかり数えていては幸せになれないと諭しています。 情けは人のためならず・・・隣家のお爺さんと三女ベスの会話の中で、お互いに相手を気遣う様子があります。この時の二人の関係は、後々両家が互いに思い遣る重要な関係に繋がって行きます。人に親切にしておけば必ず良い報いがあるという諺そのものです。 私小説 (自叙伝) です。少なくとも四姉妹と父母・伯母・お手伝いは実在の人物と思われます。二女として登場するジョーがオルコットです。猩紅熱に罹った三女のベスは奇跡的に回復しますが、実際は亡くなっています。四姉妹は多分小説の中の人物像そのままだったのでしょう。 登場人物は皆善良な人達です。他人を思い遣る気持ちが底に流れ、生きることの困難も楽しさも、全員の良心が包み込んでいます1868年発表の作品。170年程も昔の小説でありながら、古くささというものを一切感じません。 読み終えることができて良かったという気持ちです。 |
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