《私の本棚 第204》   平成26年2月号

    兔の目」     灰谷健次郎 作

 作者は17年間教師を務め、その後作家になりました。

 教師と小学一年生の子供たちとのふれあいを通じて、この世にはかけがえのないものがある事を教えています。子供たちの遊びに関係して様々な動物が登場します。ハエ・ハト・カラス・ネズミ・カエルなど。どの動物もいつも男の子達が関心をもって触れる生き物です。生活環境(かんきょう)もいろいろです。親がゴミ処理場で働くのでその近くの劣悪(れつあく)な環境で生活をしている子供。またそうではない地域の子供。今はある意味では落ちぶれた生活をしていても、過去にはそれなりの人生を送っていた人。きっちりとした生活をしていても心の中には大きなしこりを持つ人。大人も子供も内面に何かしらの(くも)りをもっています。
 そんな中で小谷という新人女性担任の懸命(けんめい)な努力と、「みなこ」 という障がいをもつ女の子との関わりを通して他人に対する思いやりの心を持つようになっていきます。足立という中堅男性教師 (恐らく作者に重なるのでしょう) が、小谷先生をバックアップします。そうして多くの人達の協力を得ながら子供たちも授業だけでは得られない計り知れない価値あるものを体得していきます。

  子供も先生も地域の人も皆、兔の目のような優しさをたたえていました。子供たちに是非読んでもらいたい一冊です。
 
ムスカリの花、紫、あんな本こんな本





 ムスカリ

 (花言葉=通じ合う心)




 
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