《私の本棚 第190》   平成24年12月号

    「原典 日本昔話」から 「食わず女房」

               由良 弥生 著

 本当は怖いグリム童話とかが沢山出ましたが、その流れに乗った一冊です。この食わず女房は、テレビの昔話でも放映されましたのでご存じの方も多いと思います。

 食うや食わずの百姓の若者が 「嫁は欲しいが何も食わないおなごなら良いのだが」 と思案しておりました。そんな女が居るはずも無いのですが、ある日食べるものは何も要らないという女が尋ねてきます。いつの間にか二人は夫婦になります。何も食べないなんておかしいという友人の忠告で、女房の様子をそっと窺っていると後頭部にぽっかり開いた口から大量の飯を飲み込んでいました。見つかった友人はその女に貪り食われてしまいます。男は菖蒲の葉 (魔除け) で助かりますが、女は蜘蛛の化身でした。

  解説にこうあります。

「何も食べない」 妙齢の美女の正体が 「何でも食べる」 恐ろしい化け物。限りなく無償の愛を与え、その上、自らは何も欲しない (何も食べない) 聖母のような女性たる女房は、実はその強烈な自我によって、男を、ひいては自分の子すら飲み込むほどの強烈な自我を隠し持っていた。 恐るべし美形の女。世の男性諸氏ご用心あれ。
 
南禅寺紅葉、あんな本こんな本




 南禅寺
 
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