《私の本棚 第165》   平成22年12月号

    「床下の小人たち」  メアリー・ノートン 作   

 イギリス人作家で1952年作。 この題名を見て、アニメ映画 「借りぐらしのアリエッティ」 を思い浮かべる人も多いのかと思います。私が読んだ動機は単純で、岩波文庫発行の月刊図書に掲載された広告のブックカバー表紙写真に強く惹かれました。
 もとの題名は The Borrowers で借りる人達です。身長は20pくらいで、野原の小動物が掘った穴や家の床下など目立たないところに住んでいます。彼らは人間から色々なものをコッソリと借りてきて暮らしています。主人公のアリエッティーは父親のポッドと母親のホミリーの三人で暮らしています。彼らは自分たちがごく普通の生活をしていると思っていますが、人間から見ればそんなことはありません。名前だって本人は普通だと思っていますが 「豆のさや」 といったような借り物です。食べるものは人間の朝食の支度中ににこっそりと拝借しているだけです (盗んではいないのです。しかも人間は一寸減っているだけですから気づきません)。 床のすみっこに落ちている糸くずで縫い物をしますし、クリップピンはドアの鍵に、シャガールの絵柄切手は格好の壁飾りです。忘れさられていたちびた鉛筆で日記を書いたり、おもちゃの食器は丁度良い大きさです。レースの切れ端で洋服を飾ったり、空のマッチ箱をタンスにしたりして生活に利用しています。水は水道管から漏れたものを使いますし、暖房はガス管の小さな穴から漏れているものを借りています。慎ましくひっそりと目立たない空間で人間に迷惑をかけずに生きているのです。彼らからすれば雲を突くような大きな人間は、この世界にごくわずかしかいないのだと思っています。あるとき意地悪なお手伝いさんに見つかって、安心できる住まいを探しに旅に出るところで終わっています。
 何も難しいことは考えずに、素直に読めば良い本です。全く価値観の異なる人達が人間に気づかれずに住んでいると思うと楽しいですよね。自分が小人になって床上の人間や大きくて広く明るい空を想像したり、ひょっとしてこの足下に小人が住んでいるかも知れないと想像するのも面白いものです。

 ハリーポッターでもなければアバターでもない暖かい世界を楽しませてもらいました。小学校高学年向きの一冊です。
岐阜県、神岡、あんな本こんな本






 岐阜県 神岡町

 毛利さんの
 宇宙飛行を記念した碑


 
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