《私の本棚 第159》   平成22年5月号

    「宝 島」    スティーブンソン 作

作者は1850年イギリス生まれ。工学を学んだ後弁護士になり、後に 「宝島」 や 「ジキル博士とハイド氏」 を執筆。

 冒険物語としてごくありふれた作品の一つ。というと誤解を招きますが、ストーリーに奇抜さはないが長年の読者に耐えうる名作の一つであるという意味です。
 海と船と無人島とくれば、少年少女達の夢を大きく膨らませ、恐らく経験することの無いであろう事を想像の中で満たしてくれます。作者はイギリス文学中有数の文章家であるという評判ですが、確かに、原文では読めない私でも 「英文は一体どんな表現で書かれていたのか」 と思うような訳文が随所に出てきます。書評でもその描写(原文)の巧みさは高く評価されています。 作中に出てくる人物では、少年ジムと片足のシルバーが中心になりますが、シルバーは異色の存在です。
 最初の題名は 「船のコック」 だったそうで、これはシルバーのことです。こんな人間はいるかな?と思いながら読んでしまいます。居そうでいなさそうで、それでいてやはりいそうな気がします。それもそのはず、批評家はこぞって最も賛嘆するのが、片足の海賊シルバーの性格だそうです。

引用すると……「この快活、饒舌、柔和、慇懃、陰険、横柄、勇敢、残忍、聡明、雄弁、剛胆、狡猾-----端倪すべからざる人物」……と評されています。

 この文庫本を読んでいて、何も挿絵の無いページなのにふと鮮明な挿絵が脳裏に浮かんできました。ジムや船長たち善人が丘の上にある小屋に立てこもってシルバー達と戦うシーンです。確かにその絵を見たことがあるという記憶です。子供の頃に親に買ってもらった本に描かれていたのだと思います。懐かしい思い出でした。
ピラカンサ、糸切り虫、あんな本こんな本




 ピラカンサと糸切り虫
 
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